【医師ママが解説】まさか、それが凶器に?ボタン電池・ネオジム磁石の誤飲リスクと、今すぐできる安全対策

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こんにちは。医師ママのめぇです。

子育て中のご家庭には、リモコンや体重計、おもちゃなど、電池で動くものがたくさんありますよね。また、強力な磁石を使った知育玩具も人気です。

「うちの子はもう何でも口に入れる時期は過ぎたから大丈夫」そう思っていませんか?

以前、指はさみ事故について記事を書いた時も「注意」だけでは防げないことをお伝えしましたが、他の事故と同じように、「少しの油断」で取り返しのつかない重篤な傷害を引き起こすのが、ボタン電池やネオジム磁石の誤飲事故です。

特に、リチウム電池や複数個の磁石の誤飲は、発生から時間が経つほど危険性が高まるため、保護者がそのリスクを正しく理解し、対策を講じることが重要です。

この記事では、具体的な事例とともに、これらの危険物からわが子を守るための科学的な対策をお伝えします。

目次

致命的な危険性を持つ「ボタン電池・リチウム電池」の誤飲リスク

ボタン電池やコイン型リチウム電池は、電気製品や玩具に広く使われており、子どもが接触する機会が多いのが現状です。

ボタン状の形状で、リチウム電池やアルカリ電池などがあります。ボタン電池の誤飲では、事故の現場を大人が目撃していないケースも多いため、2~3歳以下の乳幼児が突然の嘔吐や流涎(よだれを垂らすこと)を見せた場合は、誤飲を疑う必要があります。

ボタン電池・リチウム電池を使用する製品の例

  • リビング:各種リモコン、ゲーム周辺機器、LEDライト
  • キッチン:スケール、タイマー、電子キャンドル
  • 洗面所:体重計、電動歯ブラシ
  • 寝室:目覚まし時計、小型ライト
  • その他:車のスマートキー、体温計、おもちゃ

製品の軽量化や小型化が進み、ボタン電池の使用頻度は高くなっており、さらに長時間使用できるように電池の起電力(電圧)を高くする傾向にあるため、今後も誤飲事故が増える可能性があります。

ボタン電池誤飲による危険性

ボタン電池が消化管に接触し、消化液などの電解質に電気が流れると、電気分解によってアルカリが作り出されます。これにより、消化管壁が損傷(化学やけど)をする恐れがあります。

1. 食道や喉頭に停滞した場合

    ◦ 緊急度、重症度が非常に高いです。電池の化学作用や残存する起電力(電圧)により、食道組織が短時間で腐食・壊死します。

    ◦ 犬の実験によると、食道にボタン電池がわずか4時間停滞するだけで、食道粘膜に糜爛(びらん、ただれ)が認められたそうです。

2. 食道を通過して胃内に入った場合:

    ◦ 72時間以内に85.4%が便の中に自然に排泄されるとされており、緊急度・重症度は低くなります。

めぇ

実際の事故事例を見てみましょう!

【事故事例1:リチウム電池による食道粘膜損傷】

状況:1歳7ヶ月の男児。母親が「ごくり」という音を聞いた後、子どもがダラダラと唾液を垂らしているのを発見しました。近くには電池の取れた空気清浄機のリモコンが落ちていたため、誤飲が疑われ病院受診しました。

治療経過:誤飲してから約4時間後に内視鏡でリチウム電池を摘出しました。摘出直後の食道粘膜は黒色に変色し、糜爛(びらん)を認めました。幸いにも保存的な治療により、1ヶ月後には治癒が確認されました。

【事故事例2:極めて重症化したもの】

状況:1歳2か月の男児。午後 0時 20分頃、居間の引き出しに入っていたボタン電池が 1個不足していることに母親が気づきました。その後、児が嘔吐し唾液様のものを 3~ 4回吐き、苦しそうにしていたため、母親がボタン電池の誤飲を疑って救急車を呼び、午後 1時 15分に病院到着しました。

治療経過:全身麻酔下による処置中、内視鏡で食道入口部周囲に著しい浮腫、発赤、びらん、そして壊死組織に覆われた異物が確認されました

最終的に、胸部X線写真で縦隔気腫(じゅうかくきしゅ)が認められたため、小児外科医のいる施設に転院し、食道狭窄が再確認され、胃瘻造設(胃に穴を開けて栄養を送る手術)が行われました。食道狭窄は残ったものの、入院26日目で退院となりました。

めぇ

重症な症例です

【事故事例3:容易に開く蓋の危険性】

状況:0歳11ヶ月の男児。夜に、遊びに来ていた2 歳の従姉とキッチンタイマーを取り合って遊んでいるところが目撃されていました。翌朝、母親がキッチンタイマーが使用できないことから電池が入っていないことに気づき、誤飲の可能性を考えて、昼前に病院を受診しました。

治療経過:胸腹部X線写真で電池は胃内にあると判断され、別の病院を紹介受診し、胃カメラで、胃体下部から前庭部にかけて線状のびらんと発赤が認められました。電池はその後便中に排泄されました。 後日確認したところ、このキッチンタイマーの電池収納部の蓋はスライド式で、乳幼児でも容易に開閉できることが予測されました。

めぇ

食道で停滞するか、胃内に落ちているかで経過が変わりますが、電池の場所は検査しないとわかりません。疑ったら、必ずすぐに病院受診しましょう!

腸管を挟み込む「ネオジム磁石」の誤飲リスク

小型の磁石の誤飲もまた深刻な事故につながります。特に強力な磁力を持つネオジム磁石は、従来の磁石の10倍近い磁力を有しており、注意が必要です。

ネオジム磁石を含む製品:

  • 知育玩具の磁気ビーズ
  • デスクトイ(大人用の文房具)
  • DIY用マグネット
  • アクセサリー類

複数個の誤飲が致命的になる理由

磁石を一つだけ飲み込んだ場合、自然排泄が期待できるため、大きな問題になることは少ないです。

しかし、複数個の磁石、または磁石と金属体を誤飲した場合は、極めて危険です。

磁石を複数個を誤飲すると体内で強力に引き合い、腸管壁を挟んで圧迫します。この圧迫により腸閉塞や腸捻転を起こしたり、腸管の血流が悪くなり、組織が壊死して穿孔や瘻孔をきたしたりします。最悪の場合には死亡に至る可能性があります。

めぇ

見た目が元気でも、腸の中で静かに進行する深刻な状態です。

【事故事例4:磁石と鉄球の誤飲による小腸穿孔】

状況:1歳11ヶ月の男の子。水様便や嘔吐が数日続き、急性胃腸炎を疑われ、投薬加療を受けていました。症状が出てから11日目に頻回嘔吐となり、夜間救急を受診しました。

症状と治療経過:夜間救急では、腹痛、発熱、苦悶様顔貌(苦しそうな顔つき)が見られ、単純X線写真で腹部に球形異物と、腸管穿孔によるフリーエアー(空気の漏れ)が確認され、緊急開腹手術が行われました。

結果:手術により、内瘻形成と2か所の小腸穿孔が認められ、切除・縫合されました。摘出されたのは直径5mm大の金属球3個と、磁性のある四方形の金属2個(直径2mm大)で磁石した。この磁石は、元はおもちゃに使用されていたものが、おもちゃの劣化により磁石が離れた状態になっていました。幸い、後遺症なく退院しました。

背景:磁石はおもちゃ箱の中に入っていた可能性があると推察されました。家では、蓋のないおもちゃ箱が床に置いてあり、いつでも中身を取り出せる状態だったそうです。誤飲した時期は不明です。

めぇ

誤飲の目撃がなかったので、検査をするまでは判断が難しかったと思います。

今日からできる!誤飲を防ぐための安全対策

誤飲事故も「注意」だけでは防げません。危険物を物理的に隔離し、環境を整えることが最も重要です。

製品の安全性を徹底的にチェックする

電池収納部の構造確認: ボタン電池やリチウム電池を収納している電気製品や玩具の蓋が、子どもが開けにくい構造になっているかを確認しましょう。スライド式など、乳幼児でも容易に開閉できる構造の場合は、使用をやめるか、子どもの手の届かない場所に隔離しましょう

電池の包装確認: ボタン電池の包装は、子どもが開けにくい包装になっていることが多いですが、再度確認しましょう。

玩具の劣化確認: 磁石玩具は、使用中に劣化して磁石が棒から離れてしまうことがあります。小型の磁石が容易に取り出せないような構造になっているか、劣化していないかを定期的に確認しましょう。

危険物を子どもの手の届かない場所に隔離する

電池の管理徹底: 使用済みの電池や、製品から外れたボタン電池は、乳幼児が飲み込みやすく、喉頭や食道に停滞しやすいサイズであるため、必ず収納容器を決めておき、片づけ時などに個数を確認するといった習慣をつけることも有用です。

小型の磁石を隔離: 強力な磁力を持つ小型の磁石(特に複数個セット)は、子どもが触れられる状況に置かないようにしましょう。

誤飲が疑われた場合の対応

ボタン電池や磁石の誤飲は重篤な後遺症を残す可能性があるため、万一誤飲が疑われた場合や、子どもが突然の嘔吐や流涎を見せた場合は、すぐに医療機関を受診してください。

特に磁石については、複数個の磁石、または磁石と金属を子どもが誤飲した場合には、重篤な消化管障害が起こりうることを念頭に置き、直ちに専門医(小児科、救急科、小児救急科など)の診察を受けてください。誤飲した時間がはっきりわからない場合も多いため、疑った時点ですぐに対応することが重要です。

まとめ:今日から安全対策を見直しましょう

リチウム電池やネオジム磁石の誤飲事故は、子どもの命や将来にわたる機能に影響を及ぼす、非常に重大な事故です。

「うちの子は大丈夫」という思い込みを捨て、今日からわが家の電気製品や玩具の安全性を見直しましょう。

危険物致命的なリスク今すぐできる対策
リチウム電池食道に停滞すると短時間で腐食・穿孔。胃内でもびらんを起こすことがある。電池収納部の蓋が子どもに開けにくいか確認する(スライド式などに特に注意)。使用済み電池は個数管理し隔離する。
ネオジム磁石(複数個)腸管壁を挟んで接着し、壊死、穿孔を起こす。小型・強力な磁石は子どもの手が届かない場所に隔離玩具の劣化や、小さな部品が離れていないかをチェックする。

安心を、物理的な対策によって実現していきましょう。

皆さんの参考になればうれしいです。

参考サイト

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この記事を書いた人

医師ママの安全Life研究所🐑
37歳在宅医師 | 2児の母

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