こんにちは。めぇです。
毎日の歯磨き。むし歯予防に大切な習慣ですが、実はその裏に、命に関わる危険もあることを知っていますか?
それは、歯ブラシがのどの奥に刺さってしまう危険です。
のどの奥には太い血管があり、さらに奥には脳幹や脊髄などがあります。これらに歯ブラシが刺さってしまったら命に関わります。また、口の中には細菌が多くいるため、喉のさらに奥で膿ができることがあります。こちらもまた命に関わります。
歯ブラシ事故の実態
東京消防庁の報告によると、令和4年までの5年間で、歯ブラシで受傷した事故により、5歳以下の乳幼児が182人が救急搬送されています。特に多いのが1歳と2歳で、ちょうど自分で歯磨きをしたがる時期です。
実際の事故事例から、予防策を考えてみたいと思います。
ケース1:ソファから転落し、歯ブラシがのどに刺さった例
夕食後、いつものように歯磨きをしていた4歳の男の子。洗面所で始めた歯磨きでしたが、居間にいるお母さんのところへ行こうと、歯ブラシを口にくわえたまま移動しました。
1人掛けソファの肘掛け(高さ約50cm)に立っていたところ、突然転倒。フローリングの床にうつぶせに倒れ、お母さんが駆け付けた時は、歯ブラシの柄が口から見えている状態でした。
お母さんが慌てて引き抜くと、歯ブラシの先端約3cmが無くなっていました。
病院での検査の結果、歯ブラシの先端部分が上咽頭(のどの上の方)に残っており、内頚動静脈の背側という非常に危険な場所に刺さっていることが判明。全身麻酔下での摘出手術が必要となり、術後は膿もできてしまいました。
ケース2:母の背中に抱きついた瞬間、頬の内側に刺さった例
寝る前の歯磨きの準備として、お母さんは1歳9か月の男の子と4歳のお姉ちゃんに歯ブラシを渡しました。お母さんがテーブルを拭いていたところ、男の子が歯ブラシをくわえたまま駆け寄ってきて、背中に勢いよく抱きつきました。
その瞬間、歯ブラシの先端が右頬粘膜に深く刺さりました。
慌てて歯ブラシを抜くと、刺さっていた場所から脂肪組織が溢れ出てきて、どんどん大きくなりました。閉口できず、よだれが止まらない状態に。
緊急入院となり、翌日に全身麻酔下で手術となりました。幸い他に重篤な損傷はなく、3日後に退院となりましたが、一歩間違えれば重大な後遺症が残る可能性もあったケースです。
ケース3:受傷3日後に脳梗塞を発症した症例
2歳1か月の女の子が、歯ブラシを咥えながら三輪車に乗っていたところ転倒。両親がすぐに駆けつけたところ、女の子と三輪車が倒れており、そばに歯ブラシが落ちていました。
口腔内の出血はなく、受診した病院では軟口蓋に軽い出血斑を認めるのみ。神経学的所見にも異常がなかったため、抗菌薬を処方されて帰宅しました。
ところが、受傷から3日後の朝、突然自力で立ち上がれなくなり、救急搬送されました。
検査の結果、右内頸動脈が閉塞し、右中大脳動脈領域に脳梗塞を起こしていることが判明。左上下肢に麻痺が残り、72日間の入院治療が必要となりました。
リハビリにより日常生活を送れる程度まで回復しましたが、軽度のマヒが残りました。
これらは日本小児科学会に実際に報告された事例です。決して「よその家の話」ではありません。

なぜ1歳・2歳に事故が多いのか
東京消防庁のデータを見ると、歯ブラシ事故で救急搬送された子どもの年齢別内訳は以下の通りです。
- 1歳:108人(最多)
- 2歳:62人
- 3歳:30人
- 4歳:13人
- 0歳:11人
- 5歳:5人
圧倒的に1歳・2歳に集中していることがわかります。
1歳・2歳に事故が多い3つの理由
1. 歩行が不安定な時期
1歳前後で歩き始めたばかりの子どもは、バランスを崩しやすく転倒しやすい時期です。頭が重い上に、手に何かを持っていると、とっさに手をつけずに顔から転倒してしまいます。
2. 危険を理解できない
「歯ブラシを口にくわえたまま歩いてはいけない」という理屈を理解できる年齢ではありません。注意しても、数秒後には忘れてしまいます。
3. 自分で歯磨きをしたがる時期
歯が生え始め、歯磨き習慣をつけようとする時期です。「自分でやりたい!」という気持ちが強く、大人の手を借りることを嫌がります。兄姉の真似をして、歯ブラシを持ちたがることも多い時期です。

歯ブラシ事故が重症化する理由
「歯ブラシって、箸やフォークに比べて太いし、そんなに危険ではのでは?」
私自身、医師になる前はそう思っていました。でも、医療現場では事故症例が繰り返し報告されており、のどや頬に刺さりやすいと言えます。
口の奥には命に関わる重要な部位がたくさんある
歯ブラシが刺さる咽頭(のど)の奥には、以下のような重要な部位があります。
- 内頸動脈・内頸静脈:脳へ血液を送る大切な血管
- 気管・食道:呼吸と食事に関わる器官
- 頸椎周辺の神経:脳と体をつなぐ重要な神経
これらを傷つけると、命に関わる重篤な合併症を引き起こします。
歯ブラシ事故で報告されている重篤な合併症
- 咽後膿瘍:口の中の雑菌が傷口から入り、喉の奥に膿がたまる
- 縦隔気腫:傷口から空気が漏れ出し、首から胸にかけて広がる
- 内頸動脈損傷・脳梗塞:血管が傷つき、時間が経ってから血栓ができて脳梗塞を起こす
- 敗血症:感染が全身に広がる
受傷直後は軽症でも、時間差で重症化することがある
特に注意が必要なのは、受傷時には軽い傷に見えても、数日後に重篤な症状が出現するケースがあることです。
先ほどのケース3のように、受傷から3日後に突然脳梗塞を発症した例もあります。これは、口腔内の外傷は軽微でも、衝撃で内頸動脈が損傷を受け、動脈解離や内膜損傷が生じ、時間が経ってから血栓ができるためです。
小児では頸椎周囲組織が未発達なため、頸部が伸展した状態での衝撃で内頸動脈が損傷を受けやすいと指摘されています。
今日から実践!歯ブラシ事故を防ぐ5つの予防策
ここからが最も大切な部分です。これらの予防策を知り、実践することで、歯ブラシ事故は減らすことができます。
【予防策1】床に座って歯磨き、が鉄則
最も基本的で、最も効果的な予防策です。
東京消防庁の調査によると、歯ブラシ事故の原因は以下の通りです。
- 歯磨き中の転倒:65%
- 人やものにぶつかる:10%
- 踏み台からの転落:5%
ソファ、椅子、踏み台など、高さのある場所での歯磨きは絶対に避けましょう。
我が家での実践例
我が家では、洗面所ではなくリビングで歯磨きをすることにしています。
- 親が床に座って歯磨きをする様子を見せる
- 子どもにも同じようにして磨くよう伝える
「洗面所で立って磨く」という固定観念を捨てたことで、転倒リスクが大幅に減りました。
保育園・幼稚園でも床に座って歯磨き
多くの保育施設では、安全対策として床に座って歯磨きをさせています。家庭でも同じ習慣をつけることで、子どもも抵抗なく受け入れやすくなります。
【予防策2】子ども用と仕上げ磨き用の歯ブラシを使い分ける
歯ブラシは2本用意し、用途を明確に分けましょう。
子どもが自分で持つ歯ブラシ
以下のような、のど突き防止対策がされたものを選びます。
- ブラシ部分が柔らかく曲がるタイプ
- 奥まで入らないストッパー(リング)付き
- 喉をつかない短めの設計
- 両手で持ちやすい太めのグリップ
市販されている乳幼児用歯ブラシの中には、安全性に配慮した商品がたくさんあります。対象年齢を確認し、使用前には破損や不具合がないかチェックしましょう。
めぇ安全設計の歯ブラシも、使用中は必ず「見守る・座らせる」ようにしましょう
注意:ストッパー(ツバ)が外れる事故も
安全対策としてついているストッパーですが、取り外せるタイプの場合、外れたストッパーを誤嚥して窒息した事例も報告されています。
- ストッパーがしっかり固定されているか確認
- 緩んでいたら使用を中止
- 子どもが触って外さないよう注意
親が仕上げ磨きをする歯ブラシ
しっかり磨ける大人用の歯ブラシを使います。こちらは子どもの手の届かない場所に保管し、絶対に子どもに持たせないようにしましょう。
【予防策3】歯磨き中は目を離さない
医療現場に報告される事故の多くが、「ほんの数秒目を離した隙に」起きています。
子どもが歯ブラシを持っている数分間だけは、見守るのが良いと思います。
兄弟がいる家庭は特に注意
実際の事故事例では、以下のようなケースが報告されています。
- 3歳の兄が背後から覆いかぶさった(1歳3か月男児のケース)
- 一緒に歯磨きしていた姉とぶつかった
- 兄が遊んでいるおもちゃを見に行って転倒
複数の子どもが同時に歯磨きをする時は、それぞれが安全な距離を保てるよう配置しましょう。それぞれの歯磨きタイミングを少しずらすのもよいかもしれません。
【予防策4】歯ブラシは子どもの手の届かない場所に保管
「歯磨きが終わったら、すぐに片付ける」を習慣にしましょう。
1歳前後の子どもは、大人や兄弟の真似をして、何でも触りたがります。
洗面台の高い場所など、子どもの手が届かない高さや、蓋つき容器など、簡単には取り出せない工夫もよいと思います。


もしも事故が起きてしまったら
万が一、歯ブラシや箸などが口の中に刺さってしまった場合の対応を知っておきましょう。
受傷直後の対応
1. 慌てず、状況を確認する
- 歯ブラシは破損していないか
- 口の中に異物が残っていないか
- 出血の程度はどうか
- 意識ははっきりしているか
2. すぐに医療機関を受診する
軽い傷に見えても、必ず受診してください。
- 口の中の傷は外から見えにくい
- 奥深くに刺さっている可能性がある
- 時間差で症状が出ることがある
受診時には以下を伝えましょう。
- いつ、どこで、どのように事故が起きたか
- 使っていた歯ブラシの種類(できれば現物持参)
- 破損の有無
- 出血や嘔吐の有無
3. 刺さった異物は無理に抜かない?
これは状況によります。
浅く刺さっている場合は、保護者が落ち着いて抜去することもあります(実際の症例でも、保護者が抜去したケースが多い)。
しかし、深く刺さっている、または抵抗を感じる場合は無理に抜かず、そのまま医療機関へ。抜去時に血管や組織をさらに傷つける可能性があります。



迷ったら、近くの病院(救急外来や小児科)に電話で相談しましょう
歯ブラシだけじゃない|棒状のものすべてに注意
同じような口腔内外傷は、歯ブラシ以外でも起きています。
注意が必要な日用品
- 箸・割り箸
- フォーク
- 鉛筆・ペン
- ストロー(特に固いプラスチック製)
- 体温計(電子体温計でも刺さった事例あり)
- 笛型のおもちゃ
- ラップの芯
- 綿菓子の棒
- 太鼓のバチ
「口に入り、ある程度の長さと硬さがあるもの」は、すべて刺傷のリスクがあります。
まとめ|「知っている」が命を救う
歯ブラシ事故は、決して珍しい事故ではありません。
でも、正しい知識と予防策を知っていれば、多くの事故は防ぐことができます。
今日から実践できる4つの予防策(まとめ)
- 床に座って歯磨き:転倒・転落リスクを減らす
- 歯ブラシの使い分け:子ども用は安全設計のものを
- 目を離さない:数秒の油断が事故を招く
- 手の届かない場所に保管:勝手に持ち出せないように
完璧を目指さなくていい
私自身、毎日バタバタで「今日もちゃんとできなかった」と反省することばかりです。
でも、「知っている」だけで、ふとした瞬間に「あ、これは危ないかも」と気づくことができます。その小さな気づきが、事故を防ぐ第一歩になります。
だからこそ、安全に、楽しく続けられる環境を整えてあげたいですよね。
明日からの歯磨きタイム、ほんの少しだけ安全対策を意識してみませんか。
子どもたちの笑顔と健康を守るために、一緒に「事故予防」を日常に取り入れていきましょう。




参考資料







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